平成27年08月04日(騒音・低周波音被害者の苦悩と後悔) (51)
先日、あるご婦人からHPを見て電話を頂いた。
「我が家の裏に店舗が来ることになり、開店前に定格出力15kwの
ガスヒートポンプエアコン室外機〔以降GHPと略〕(メーカーカタロ
グ値62dBA無響室)の設置については、住宅に向けて設置しない
との約束を破り2台設置され、他に以前は畑(現駐車場)に向けて設
置され合計4台が敷地境界近くに設置されました。
その後、無届(約6年後特定施設届出)のまま7.5kW以上のコン
プレッサーを設置、やがて車の整備工場になり、板金の音や有機溶剤
を使用した塗装作業が始まりました。
その結果、操業中は、騒音、低周波音、有機溶剤臭、燃焼臭も室内に
入り込み家族が体調を崩し、イライラ感から家庭環境が一変しました
。
GHP(定格出力15kw1500CC4気筒OHV LPG燃料〔タクシ
ーエンジンとほぼ同じ〕により夏は冬の3倍の出力でコンプレッサー
駆動、冬は燃焼熱利用で出力は抑えられる)は、時に24時間稼動と
季節により騒音等が大きくなる時期がありました。 隣家も同様の被
害を訴えられました。
現在、民家に向けられていたGHPは移設されましたが、当時の被害に
ついては自分なりに店舗(後に整備工場)、行政、専門家の先生(低
周波音、可聴音の測定実施)他にも相談したのですが、解決せずに時
効となり、悔やんでも悔やみきれない、せめて同じ苦しみはして欲し
くないという気持ちです。」
ご婦人は、騒音規制法、条例や環境法等に詳しくなかったことで自分
を責め、後悔されていますが、被害に逢わない限り、そのような環境
法等は知らないのが普通です。
普通に生活している人が騒音・振動・低周波音等の環境悪化の被害を
受けても何を、どうすれば良いのか戸惑う人がほとんどではないでし
ょうか。
順次、Q&Aにて微力ながら現在、騒音・低周波音等の被害に苦しまれ
ている方の一助になればとの思いで掲載致します。
平成27年12月04日(音の歴史) (52)
1.空気中の音速を予測したニュートン
17世紀に正確な測定器も無かった時代に空気中の音速を295
m/sと予測していた。
17世紀末に現在の音速に近い数値になった。
2.水中の音速を求めたダニエル・コラドン
当時のストップウォッチは1/4秒まで測定可能であったらしく
、ジュネーブ湖での測定値は1435m/sとほぼ現代の実測値と
違わなかった。
3.大音量を発する生物
テッポウエビの必殺技:体長は種類にもよるが5cm前後で爪を
鳴らすと最大190dB程度の衝撃音を出し、近くの小魚は失神
等により捕食するとの事。
マッコウクジラのクリック音:軍事ソナーを越える200dB以
上を発生するとの事。
4.1950年代の新たな音
この頃になると音が人に及ぼす効果に関心が高まる。超音波と低
周波音。超音波はエコーとして医療用、産業用、軍事用に利用さ
れている。低周波音は、奇妙な現象が確認され、体感(ボーッと
いう音、耳がツンとする、臓器の固有振動と数に近い場合、不快
感・眠気を与える)が報告されている。
5.聞こえない、薄気味悪い
「機械の中の幽霊」と言う論文を1998年ヴィク・タンディと心
理学科のトニー・ロレンス博士は投稿した。論文の概要は、タン
ディがフルーレ(フェンシングの剣)を修理していた時、フルー
レが特定の場所で振動し、換気扇を止めたところ振動は止まった
と同時に「とんでもなく重いものが取り除かれたような気がした
」と書いており、後に超低周波を計測すると眼球を震わせるのと
同じ周波数であることがわかった。
低周波音の定義や規制値(参照値)が国際的に一致した基準が出
来ないのは、量-反応関係データの全般的な不足が背景にあり、
発展途上の分野であると言わざるを得ない。
6.0dBとは?
空気中では20μPa、水中では1μPaが0dBとなるため、注意が
必要。
7.LRAD(長距離音響装置)
2005年ソマリアの海賊阻止のため、超指向性のある音波ビー
ムを約9kmまで使用可能な大音量かつ不快な音響装置であり、
農業用にも転用されている。
(引用:騒音の歴史(マイク・ゴールドスミス著))
平成28年01月28日(風力発電風車近くでの騒音感について) (53)
私用で立ち寄った風力発電風車近くにて携帯電話(動画モード)での
収録と騒音感
風力発電概要
水平軸可変翼式可変速型、タワー高さ37m、翼の直径45m
観測位置
風車の軸から約50m離れた地上
騒音感
バサッ、バサッと空気を切るような低い音とギヤーの回転音であ
った。
日常生活では無い音なので、気になるだろうと感じた。
住居地域では、騒音等の苦情が発生するだろうなという感想と、
ギヤーの音については、ある程度離せば、距離減衰もするだろう
が、低い音については不明である。
参考に動画を載せた。 (mp4ファイル 約1M)
(携帯電話での収録のため防風スクリーンがなく、音割れしている)
平成28年05月06日(マンション騒音相談) (54)
相談数が多いのが、マンション上階からの騒音苦情である。
特徴として夜間帯が多く、不眠、イラつく、怒鳴りたい衝動に駆られ
ることがある等。
配慮にかけた生活音の場合
①小物の落下音、椅子などの引きずり音等の明瞭な音。
②大人のかかとから歩く歩行音、子供の飛び跳ねる音など低音。
③深夜の入浴やシャワー、トイレの流水音、掃除機を壁等の幅木に
当てる音など。
意図的と思われる場合
①嫌がらせのように床をかかとや棒などによる衝撃音発生など。
相談者としては、基準や条例等が無いのかとよく聞かれる。
結論としては、
即効性のある方法はない。賃貸マンションでは管理会社に相談しても
廊下などの共有部分や全体としての資産維持を目的としているので、
個人間の苦情は、当事者で解決して欲しいと断られる。
あるいは、規約に個人間のトラブルについては関与しないなど明記さ
れているので対応できない。
分譲マンションの場合でも管理組合等に相談しても個人間のトラブル
等については関与しないと断られる場合が多い。
どうすれば良いのか聞かれると、
受忍限度を超えていることを客観的に示すこと、時間帯と測定結果、
受忍限度の判決、室内における環境基準の指針や睡眠時の騒音レベル
、入眠時の睡眠障害、日本建築学会の床衝撃音等級と生活実態の例な
どである。
被害者が立証しなくてはならず、費用やその時から始まる近隣関係の
悪化も考えると負担が大きい。
平成29年04月10日(音と振動について) (55)
どちらも波動であり、波の性質である周波数(振動数)や周波数によ
る反射、屈折、回折などの性質を持つ。
○音について
音については、周波数により低周波音(80又は100Hz以下)、可
聴音(20Hz~20000Hz)と超音波(20000Hz以上)に分けられ
る。
超音波は、人間には聞こえない音であり、直進性が強く、動物では
こうもり等が獲物を探すために利用している。工業的には、位置セ
ンサー、距離計のセンサーや動体センサーとして利用されている。
低周波音は、環境省の低周波音測定マニュアルにより、周波数によ
り建具や置物などが揺れる物的苦情といらいら、圧迫感等の心身に
係る苦情に分けられる。これらは、上記の苦情が発生する目安とし
て参照値がある。(規制値や基準はなく、当然、環境基準もない)
可聴音は、騒音レベル(A特性という人間の聴感補正した周波数重
みつけ)されたものが環境基準や騒音規制法で使用する。
騒音レベルは、地域性や用途により決められており、住居を中心に
考慮された地域では、騒音レベルが厳しく、工業を推進する工業専
用地域などでは、ゆるくなっている。
事業場内での騒音レベルについては、労働者の災害防止という観点
から指定作業場については作業環境測定が義務化され、定期測定と
測定結果から管理区分が決められる。
建築分野では、平坦特性(Z特性、昔はF特性と言っていた)で周波
数毎に音圧レベルが決められ、「建築物の遮音性能基準と設計指針
[第二版]日本建築学会編」により室間音圧レベル差、室内騒音、床
衝撃音(重量床、軽量床)に関する適用等級が決められている。
苦情系の騒音問題等については、音の大きさ、発生時間帯、頻度か
ら受忍限度を考慮した上で、どこから音が来ているのかが重要にな
り、自治体により迷惑条例が整備されているところもあるが、それ
で騒音苦情が無くなる訳ではない。
○振動について
大きく分けて3つに分類される。
1番目に身体に影響する振動加速度レベルであり、1~80Hzが対象
であり、鉛直・水平方向の身体影響の周波数重み付けされた振動レ
ベルとなる。
振動規制法では、規制値があり、道路交通振動では要請限度がある
が、環境基準はない。振動規制法、道路交通振動は、鉛直方向のみ
が対象である。重み付けしない振動加速度レベルでは、地盤卓越振
動数を求めるときに用いる。
2番目に機械(建築)系の振動加速度測定があり、設置機械が稼動
時に設置面、建物などへの振動影響を測定する時や、精密測定器設
置の事前適否測定もある。測定項目は、目的により振動加速度
(m/s2)、振動速度(m/s)、振動変位(m)がある。
大雑把な説明では、振動数(周波数)が高く、固体音に変わる場合
などは振動加速度の領域であり、振動加速度よりも振動数(周波数
)が低い場合などは振動速度の領域である。更に振動数(周波数)
が低く、目に見える程度の変化の場合は振動変位の領域である。
振動加速度→(積分)→振動速度→(積分)→振動変位で求められ
る。逆に求める場合は、微分にすればよい。
3番目に地震であるが、建築構造や高さにより地震の振動数(地震
の場合のみ振動数の逆数の1/fの周期時間を用いる)で表現され、
振動数が2Hzの場合0.5秒である。タワーマンションなどでは、
1Hz以下の1秒以上の数値もよく聞く数値であり、上層階では、ゆ
れ幅が数mとか、大型家電製品等が動く(飛ぶ)ということも耳に
されていると思う。低層住宅では3~8Hz(0.1~0.3秒)程度で
被害が大きいと言われている。
平成29年04月26日(手腕振動について) (56)
動力(エンジン、モーター、空気圧等)を用いた振動工具では、振動
により手腕の血流が減少し、代表的な疾病として白ろう病などがある
。
その対策として「振動障害の予防のために(厚生労働省労働基準局等
)」の中に「チェーンソー取扱い作業指針について(基発0710第1号
)」及び「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害
予防対策指針について(基発0710第2号)」が出されている。
概要として手の支持面座標系(3軸)の振動加速度を測定し、各周波
数に手腕系周波数補正係数を乗じ、振動加速度実効値の3軸合成値で
の評価を行い、許容基準以下の作業時間とすることにより振動障害を
予防するものである。
対象工具は、チェーンソーをはじめとして、大きく9工具に分けられ
、更に具体的な工具が指定されている。
測定法は、「JISB7762」、「ISO22867」、「JISB7761-2」があ
る。
平成29年06月16日(集合住宅 騒音はどこから?) (57)
従前は、集合住宅の苦情者は、上階からがほとんどと考えられていた
。
しかし、「日本音響学会2017 NO.6〔集合住宅における隣戸への床
衝撃音の伝播〕」によれば、戸境壁として乾式戸境壁も使用される傾
向が高く、固体音や空気音が上下階よりも隣戸間の方が伝播しやすい
場合もあるという。
集合住宅も同じ間取りからカスタマイズされる傾向があるらしく、
その場合、乾式戸境壁を使用したほうが造作しやすいということもあ
り、今後は単純に上階からの固体音伝播による影響と単純にはいえな
い状態に入るのかなと思う。
上記、専門誌にも上階は無人であるのに歩く音が聞こえておばけか怪
奇現象ということも実は隣戸だったということも編集後記に記載され
ており、先入観や過去の経験則もほどほどにということか。
平成30年05月25日(「私には聞こえるのですが・・・」) (58)
苦情者宅でよく言われる。
とりあえず、話を伺う。
次に調査計画を作るために、詳細に以降のヒアリングを行う。
「いつ、どこで、どのような時に、誰が、どのような騒音なのか等」
過去の例では、
横になっている時、壁や柱にもたれている時など頭がそれらに接して
いる場合にブーンというモーター音が聞こえる。
頭がそれらに接していない時は、それほど聞こえない。
見立てとして、固体振動が柱や壁に伝播して、その振動を感じ、骨伝
導しているのか。
普段もたれている壁等に振動計、その付近に騒音計、騒音(振動)を
感じた
時に押す知覚スイッチを設置する。
調査終了後、持ち帰って、データ分析する。
なるほど、固体振動が発生している時に、知覚スイッチが押されてい
る。
その時の固体振動の卓越周波数は、○○Hzであり、騒音計の卓越周波
数と一致している。 間欠的に発生しているモーター由来と考えられ
る機器が発生源か。
次にどこから伝播しているか、振動計を複数箇所設置して、振動の大
きさ、伝播速度差から絞り込んでいくが、固体の伝播速度は、音速よ
りもはるかに速いので難しい。
振動(騒音)源の目星がついたところで、強制的にその設備のON
-OFFを行い、間違いないか確認する。
間違いなければ、防振対策を提案する。
上記は、「私には聞こえるのですが・・・」の調査例である。
ただ、明らかになる時もあるが、振動計も騒音計も変化の無い時もあ
る。
平成30年06月14日(残響時間(音)について) (59)
残響時間が極端に短い例として無響室がある。
無響室とは、字の如く、響かない(反射しない)部屋である。
無響室で、叫んでも反射しないから自分の声が聞こえない(小さく聞
こえる)という不思議な感覚である。
例えると、耳の中に水が入ったようなこもった感覚である。
長時間いると自分の心臓の音が聞こえるという人もいるらしい。
逆に残響時間が長い例として、学校の廊下等があり、休憩時間など
廊下で生徒が走るなどすると騒々しい。
楽器奏者など残響時間の長い(反射音の大きい)場所で演奏すると、
イライラして二度とここでは演奏したくないと怒ることもあると聞く
。
先日、大型商業施設のフードコートで食事したが、残響音が大きく、
お客さんの話し声や調理作業音が反射して、方向感覚を失う感覚を覚
え、その場から早く逃げたい気持ちが強く食を楽しむことができなか
った。
残響時間は、室用途ごとに最適時間がある。
関連ページ 残響時間 (騒音・振動とは?)
平成30年09月07日(「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)について) (60)
先日、近しい一級建築士から標記の「CASBEE」(建築環境総合性能
評価システム)の協力要請があり、手伝ってきた。
この評価システムは、建築物の環境性能や周辺環境との調和も含めて
評価し格付けするものである。
設計時からリサイクル材を使う、太陽光を利用する、節電・節水対策
がある、周辺の植生や生息生物種との連続性がある、運用中もエネル
ギー消費が小さくなる、解体時も分別して資源回収率が良いなどによ
り評価が上がるシステムである。
評価数が100以上あったが、マニュアルが良く整理されていて理解し
やすかった。一定規模以上の建築物に適用され、計画時から全体観を
持つことが求められる時代になったのだと思った。
○ 快適環境づくりのパートナー ○
騒音測定・振動測定・低周波音測定・
建築物の遮音性能測定(建築音響)・
設備振動測定など音・振動の測定は
当社にお任せください。
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